海技免状には、1級から6級までの階級が存在します。
これはすでに知っている人も多いと思います。
「6級海技士だと何の仕事ができるのか?」
「3級海技免状なら?」
と疑問に思ったことはありませんか?
一言でいえば、船内での役職が変わってくるのですが、実際に1級海技士(機関)を持つ筆者がもう少し詳しく説明していきます。
目次
はじめに
そもそも、船舶を運行させるのには、法律で決まった海技士を載せる必要があります。
これにそれぞれ役職名がついており、その役職名は以下の通りです。
航海科 | 機関科 |
---|---|
船長 | 機関長 |
一等航海士 | 一等機関士 |
二等航海士 | 二等機関士 |
三等航海士 | 三等機関士 |
船舶職員及び小型船舶操縦者法では、
「この船舶には、船長、機関長の他に、一等航海士、一等機関士、二等機関士が必要です」
「この船舶には、船長、機関長の他に、一等~三等航海士、一等及び二等機関士が必要です」
と規定されています。そして、
「この船の一等機関士は3級、二等機関士は4級海技士以上でなければいけません。」と規定されています。
つまり、必要な人数(役職)と役職に対応する海技免状の階級が決められているわけです!
それでは、各級の海技士が務めることのできる役職を見ていきましょう。
なお、航海科は船の総トン数、機関科は機関の出力で区分が分かれます。
6級海技士でできること
航海科(甲板部)
~船長~
~一等航海士~
~二等航海士~
全て不可
~三等航海士~
全て不可
機関科(機関部)
~機関長~
~一等機関士~
~二等機関士~
全て不可
~三等機関士~
全て不可
5級海技士でできること
航海科(甲板部)
~船長~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 | 1600トン未満で可 |
沿海区域 丙区域 | 500トン未満で可 |
近海区域(限定) 近海区域 乙区域 | 500トン未満で可 |
遠洋区域 甲区域 | 不可 |
~一等航海士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 | 全て可 ※なお、1600トン未満は一等航海士いらない。 |
沿海区域 丙区域 | 5000トン未満で可 ※なお、200トン未満は一等航海士いらない。 |
近海区域(限定) | 5000トン未満で可 ※なお、200トン未満は一等航海士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 500トン未満で可 ※なお、200トン未満は一等航海士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 200トン未満で可 |
~二等航海士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 沿海区域 丙区域 | ※二等航海士いらない。 |
近海区域(限定) | 全て可 ※なお、500トン未満は二等航海士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 5000トン未満で可 ※なお、500トン未満は二等航海士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 500トン未満で可 ※なお、200トン未満は二等航海士いらない。 |
~三等航海士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 沿海区域 丙区域 近海区域(限定) | ※三等航海士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 全て可 ※なお、1600トン未満は三等航海士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 全て不可 ※なお、1600トン未満は三等航海士いらない。 |
機関科(機関部)
~機関長~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 | 3000kW未満で可 |
沿海区域 丙区域 | 1500kW未満で可 |
近海区域(限定) 近海区域 乙区域 | 750kW未満で可 |
遠洋区域 甲区域 | 不可 |
~一等機関士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 | 全て可 ※なお、3000kW未満は一等機関士いらない。 |
沿海区域 丙区域 近海区域(限定) | 6000kW未満で可 ※なお、750kW未満は一等機関士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 1500kW未満で可 ※なお、200トン未満は一等航海士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 750kW未満で可 |
~二等機関士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 沿海区域 丙区域 | ※二等機関士いらない。 |
近海区域(限定) | 全て可 ※なお、1500kW未満は二等機関士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 6000kW未満で可 ※なお、500トン未満は二等機関士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 1500kW未満で可 ※なお、750kW未満は二等機関士いらない。 |
~三等機関士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 沿海区域 丙区域 近海区域(限定) | ※三等機関士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 全て可 ※なお、3000kW未満は三等機関士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 全て不可 ※なお、3000kW未満は三等機関士いらない。 |
4級海技士でできること
航海科(甲板部)
~船長~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 | 全て可 |
沿海区域 丙区域 近海区域(限定) | 5000トン未満で可 |
近海区域 乙区域 | 500トン未満で可 |
遠洋区域 甲区域 | 200トン未満で可 |
~一等航海士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 | 全て可 ※なお、1600トン未満は一等航海士いらない。 |
沿海区域 丙区域 近海区域(限定) | 全て可 ※なお、200トン未満は一等航海士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 5000トン未満で可 ※なお、200トン未満は一等航海士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 500トン未満で可 |
~二等航海士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 沿海区域 丙区域 | ※二等航海士いらない。 |
近海区域(限定) | 全て可 ※なお、500トン未満は二等航海士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 5000トン未満で可 ※なお、500トン未満は二等航海士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 500トン未満で可 ※なお、200トン未満は二等航海士いらない。 |
~三等航海士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 沿海区域 丙区域 近海区域(限定) | ※三等航海士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 全て可 ※なお、1600トン未満は三等航海士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 5000トン未満で可 ※なお、1600トン未満は三等航海士いらない。 |
機関科(機関部)
~機関長~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 | 全て可 |
沿海区域 丙区域 近海区域(限定) | 6000kW未満で可 |
近海区域 乙区域 | 1500kW未満で可 |
遠洋区域 甲区域 | 750kW未満で可 |
~一等機関士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 | 全て可 ※なお、3000kW未満は一等機関士いらない。 |
沿海区域 丙区域 近海区域(限定) | 全て可 ※なお、750kW未満は一等機関士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 6000kW未満で可 ※なお、750kW未満は一等機関士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 1500kW未満で可 |
~二等機関士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 沿海区域 丙区域 | ※二等機関士いらない。 |
近海区域(限定) 近海区域 乙区域 | 全て可 ※なお、1500kW未満は二等機関士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 3000kW未満で可 ※なお、200トン未満は二等航海士いらない。 |
~三等機関士~
区域 | 総トン数 |
---|---|
平水区域 沿海区域 丙区域 近海区域(限定) | ※三等機関士いらない。 |
近海区域 乙区域 | 全て可 ※なお、3000kW未満は三等機関士いらない。 |
遠洋区域 甲区域 | 6000kW未満で可 ※なお、3000kW未満は三等航海士いらない。 |
3級海技士でできること
航海科(甲板部)
~船長~
~一等航海士~
~二等航海士~
すべて可
~三等航海士~
すべて可
機関科(機関部)
~機関長~
~一等機関士~
~二等機関士~
すべて可
~三等機関士~
すべて可
2級海技士でできること
航海科(甲板部)
~船長~
~一等航海士~
すべて可
~二等航海士~
すべて可
~三等航海士~
すべて可
機関科(機関部)
~機関長~
~一等機関士~
すべて可
~二等機関士~
すべて可
~三等機関士~
すべて可
1級海技士でできること
航海科(甲板部)
どんな船でも船長になれる!
機関科(機関部)
どんな船でも機関長になれる!
航行区域の分類
船には、用途ごとに航行区域が定められており、この航行区域によって、必要な海技士の人数が変わってきます。
ここでは、その航行区域についてイメージをお伝えします。詳しく知りたい方は、船舶安全法施行規則を確認してくださいね!
平水区域
→湖、川及び港内の水域と特別に定められた水域のこと指します。大阪湾なども平水区域です。イメージは、極めて陸に近い穏やかな水域と覚えておきましょう!
沿海区域
→主に領海です。沿岸から20海里(マイル)までの範囲の水域を指します。海の1マイルは、陸とは異なり1852mなので、20海里は約36㎞ですね!
近海区域(限定)
→近海区域のうち国土交通省令の定める区域。イメージは、領海(20海里)の外にも出るけど、日本がとても近い水域。内航船なら、この区域を越えて航行することはほとんどないはずです。
近海区域
→東は東経175度の縦線、西は東経94度の縦線、南は北緯63度の横線により囲まれた水域。イメージは、陸が見えなくなるような、かなり遠くの海までだけど、日本には比較的近い範囲の水域、です。
遠洋区域
→地球上の海全て。
ここからは、一般の船ではなく漁船に適用される区域です。
丙区域
→イメージは沿岸から200マイルの排他的経済水域内。
乙区域
→イメージは、近海区域とほぼ一緒。
甲区域
→すべての海。