人間が生きていくの一番必要なのが水です。
大きな船はとても長い航海をするので、必ずたくさんの真水が必要になります。
そこで、使われているのが造水装置なんです。
造水装置は、海水から真水を作ります。
今回の記事では、この造水装置の種類とそれぞれの仕組みを解説していきます。
海技士王は、実際に一級海技士(機関)を取得した筆者によって、これから海技士の取得を目指す方々を応援し支援するサイトです。
1. 造水装置の種類
海水の淡水化は主に4つあります。
- 蒸発法
- 冷凍法
- イオン交換法
- 逆浸透法
です。船でよく採用されているのは蒸発法です。
では、それぞれの簡単な説明をしていきます。
蒸発法 |
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名前のごとく、海水を蒸発させて、その蒸気を回収し水に戻す方法です。 主に、浸管式造水装置とフラッシュ式造水装置の2種類があります。 |
冷凍法 |
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海水を冷凍し、氷の部分のみを取り出して水にする方法です。 |
イオン交換法 |
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海水をイオン交換樹脂膜を利用する方法です。膜を隔てて真水と海水が存在し、海水側に圧力をかけることで、海水から真水方向への浸透圧を増大させて真水を得ます。 |
逆浸透法 |
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半透膜を使用するものです。 この半透膜とは、水は透過しますが、水に溶解したイオンや分子は透過しないという性質を持つ膜です。 |
では、海技試験対策も見据えた詳しい仕組みの解説を行っていきます。
2.蒸発法の造水装置について
海水を蒸発させて、淡水を作る場合、必要になるのが熱です。船上ではエネルギーとスペースが限られています。そのため、どのように熱を得るのかがポイントになります。
結果、
ディーゼル船 → 冷却水の排熱
蒸気タービン船 → 蒸気
を利用することになります。そして、ディーゼル船は浸管式造水装置、タービン船はフラッシュ式造水装置を採用しています。
海技試験では主にこの2種類が問題として取り扱われるので参考にしてください!
2.1浸管式造水装置
浸管式造水装置は、蒸留器と凝縮器から成り、ディーゼル機関の冷却清水(60~65℃)を冷やすときに、造水装置内の海水と熱交換します。
これにより、造水装置内の海水が60℃程度に温められます。
水は通常100℃で沸騰しますが、造水装置内は、圧力が‐700㎜Hg程度の真空に保たれていることで、60℃程度で海水は沸騰します。
この蒸気を気水分離版を通して、冷却管に当て、水滴に戻して回収します。
浸管式造水装置の構造
構造はこんな感じです。
- 海水はエンジンの冷却水60~65℃)で温められる。
- エゼクタポンプ(②右側)で蒸留器内は真空にされており、海水は温度が低くても蒸発する。(約40℃)
- 蒸発した水蒸気は気水分離器(③)を通過して、凝縮器へ移動する。
- 凝縮器内の冷却配管(④)で冷やされた蒸気は凝縮し水に戻る。
- この水が復水だめに集められ蒸留水ポンプでタンクへ運ばれる。
- このとき、復水は塩分濃度計を通過し、塩分濃度が高ければ、蒸留器に戻される。
- また、海水は蒸発を繰り返すと、塩分濃度が高くなってくる。この海水をブラインと呼び、ブラインエゼクタ(②左側)で船外に排出する。
2.2フラッシュ式造水装置
フラッシュ式造水装置は、フラッシュ箱を備えた蒸化器と蒸留器から成り、主にタービン船で用いられます。
給水が、オリフィスを通過するときに蒸発し、この蒸気がフラッシュ箱全体に分散されて、気水分離器を通し、蒸気のみを凝縮させて真水を得る方法です。
オリフィスでは、高温の給水が瞬時に圧力降下を起こすため、沸騰蒸発現象(フラッシュ現象)が生じ、大量の給水(海水が)水蒸気になるのです。
フラッシュ式は浸管式と比べ、段数を増やすことで熱効率が良くなり、蒸発量(作ることができる真水)を増やすことができます。
フラッシュ式造水装置の構造
構造はこんな感じです。
- 造水装置内はエゼクタにより抽気され低圧となっている。
- 給水(海水)がこの低圧空間に噴出され、海水は一気に蒸発する。
- この蒸気が気水分離器を通過して、水滴が分離され水冷却管で凝縮し水滴になる。
- これが、回収され蒸留水タンクへ送られる。
- 給水(海水は)フラッシュ箱に到達する前に、冷却管とエゼクタ蒸気復水器、給水加熱器で適度に熱を貰い過熱される。
- 一段蒸留器で蒸発しきれなかった海水は、二段蒸留器で再び噴出され、それでも蒸発できなかった海水はブラインとして船外に排出される。
おわりに
1、2級海技士試験の口述では、「造水装置の種類を答えてください」「○○造水装置の仕組みを解説してください」といった問題も出題されます。ここにある内容を全て、きちんと解説できれば、まず間違いなく、〇がもらえると思うので参考にしてくださいね。
筆記問題では、この図を簡略化して解答用紙に記入すれば〇がもらえるはずです。何度か自分なりの略図を描いて練習しておけば、試験当日も簡単に描けますよ!